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この度ちいさなおはなしをあつめた童話集 「角野栄子のちいさなどうわたち」全6巻を、ポプラ社から出版することになりました。これはすべて絵本よりちょっと字の多いお話です。 わたしも小さいときお話が大好きでした。すきあらば父のあぐらにはいのぼって、頭のうえから父の声でお話が降ってくるのを待ちました。父の話を聞きながら、その世界を目に浮かべることの楽しかったこと。今では、何よりも代え難い思い出になっています。 字が読めるようになると、大きな声をだして、つっかえつっかえ読みました。どんなに誇らしい気持ちだったでしょう。なにしろ一人で読めるのですから。そしていつでもお話の世界に浸ることが出来るのです。読むところは大抵廊下でした。ごろごろしながら、目を本にちかずけすぎて、何度も父に注意をされました。思い出すとそこにはいつでもおひさまが当たっていたような気がします。 そんなふうにして、子供用に短く書かれたものでしたが、アンデルセンや、グリムのお話と仲良くなりました。また日本のおとぎ話はいつもとってもスリリングでした。雀の舌を切ってしまうなんて、なんてひどいと思いつつ、私もきっと欲張りばあさんのように大きなつづらが欲しいと言ってしまうのではないかと、その点はまったく自信がなく、不安でした。 「きぬかつぎ姫」もすきでした。すり鉢がどうしても取れないのが、不気味で、あんな姿になったらどうしよう・・・ ![]() 文字は想像の中で風景になり、わたしはそこで自由にお話のなかの一人になることが出来ました。そしてお話は私のお話になっていくのでした。その間はどんないやなこともわすれました。そしていつもさっぱりしたきもちになれるのでした。どこかでおおきな満足を与えられたのでしょう。 このように、わくわく、どきどきしながら読んだこと、あのときめきは、だいじなだいじな思い出です。思い出すとあの廊下で本を読んでいるちいさな栄子ちゃんに帰って行けるのです。そんな気持ちがわすれられなくて、小さな人たちの、ちいさなお話を書き続けてきました。どうぞ手にとって、大きな声をだして読んでください。そしてあなたの思い出の一つにしてください。 |