キキ おめでとう。今年もよろしくね。

一緒に暮らしていてもさ、ちゃんとご挨拶はしないとね。昨日ね地下猫組織の新年会があってさ。あの不思議なおじいさんの猫に合ったんだよ。フィフィっていうオールドキャット。赤い大きな蝶ネクタイなんてして、おしゃれなんだあ。ぼくを見て近づいてきて、言うんだよ。
「おまえさんとは約束だったな。わしの八つ目の海での航海の話をきかせるって」 
「ハイ」ぼくはおもわず小さな声になってしまったけど、ヤッタアッって胸はドキドキ。
「わしが海坊主のイロゴトシに会ったのは八つ目の海の航海を始めてすぐの頃だった。普通海坊主っていえば、おちびさんでポコポコ海のうえに浮いているものなんだけどね、(こいつらは、これで結構イタズラモノなんだけどね) このイロゴトシはとてつもなくでっかいやつでね。東方向一面をおおうばかりに立っていて、ゆうやけにそまった西の空を見ていた。わしと目が合うと「イロゴトシです。よろしく」っていって、手を大きく広げた。まるで地球を抱きしめてるって感じだった。わしは思わずのけぞって、ふるえて、しっぽがまるまっちまった。
すると「ねえ、みてみて」って、案外かわいい声でいった。「みるよ。みせてよ」わしはあわてて答えた。イロゴトシはうれしそうな顔して、のばしていた指の先で西の空のオレンジ色をすくいとると、海のうえに大きな丸をかいて、オレンジ色で塗りつぶした。それからオレンジ色の薄いところをすくうとまわりをぼーっとぼかしたんだよ。船から見ると、海のうえにおおきな夕日がのっていた。本物の夕日はもう水平線のむこうに去り、空は暗さをましているというのに、海のうえにはまっかな夕日だよ。これはへんてこにもうつくしかった。ズボン船長も乗組員も、わしも声もなく眺めていた。もうすっかり影のようにくろくなってしまったイロゴトシはとくいそうに、はずかしそうに「たのしんでくれてうれしいよ。こんどは森なんか描いてみようかな」っていった。
 ちょうどその時、水平線から月が現れてね、ぷーっとふくれたかと思ったら、かんだかい声でいったのさ。{もう夜よ。あんた時間を狂わせないでよ}これがわしがイロゴトシに初めて会ったときのことだ」
話おわるとね、フィフィたら赤い蝶ネクタイをぴんと引っ張って、「これ、このときあいつに染めてもらったのよ」っていったんだ。それから、「魔女猫さんよ、あんた、何色がおすきかい?おひさんいろかい?おつきさんいろかい?」っていうと、にったあって笑ったんだ。やっぱり年寄りって不思議な存在。     ジジより

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